一問一答!
中野・シャーペッグ・ミュージック・カンパニーのボイストレーナーLEE(@BRAD_LEE19)です。
今回も読者様のご質問にズバズバ答えていきます!
今回のご質問はこれ!
名前: しんしん
性別: 男性
相談・質問のタイトル: 歌真似について
相談・質問の内容: 好きな歌手の歌い方の真似をして上達することはあるのでしょうか?
しんしんさん、ご質問ありがとうございます!
これは単刀直入に申し上げて、モノマネは上手くなっても歌自体が上達する事はありません。
発声の基礎を分からなかったり、歌を学んだ事がない人にとって「上手い人の歌い方を真似する」というのは、ある意味当たり前のことかもしれませんが、実際それでは上手くなりません。
もちろん全く歌や音楽に触れてこなかった人にとっては有効な手段です。
しかし、そこには限界があります。
ではなぜ歌マネでは上達に限界があるのか?
またどうしたら歌は上手くなるのか?
ご質問について具体的にお答えさせて頂きます。
なぜ歌マネ(ものまね)では上達に限界があるの?
私自身も歌を本格的に始める前は、カラオケに毎週通い、好きな歌手の真似をしながらよく歌ったものです。
平井堅、Mr.Children、GLAY、ゴスペラーズ等々・・・
もちろんカラオケに通い始める前よりは上手くなりました。
それは何事でも同じかもしれませんが「何もやらないよりはやった方が熟(こな)れる」というレベルです。
しかしここには当然限界があり、またリスクも伴います。
歌マネ(ものまね)では上達に限界がある理由
- あなたの好きな歌手の体と、あなたの体は違うから。
- あなたの好きな歌手の喚声点と、あなたの喚声点の位置が違うかもしれないから。(同じだったらこの点については問題ないです。)
- 歌が上手くなる為には、歌が上手い人の表面的な部分では無く、体の使い方や筋肉の動かし方など、生理的な部分を真似しないと上手くならないから。
ではこれがどういう事か?
一つずつ見ていきましょう。
1.あなたの好きな歌手の体と、あなたの体は違うから
人間というのは、同じ体を持っているようで、全く同じではありません。
例えば、身長、骨格、声帯の長さ(大きさ)、首の長さ、頭蓋骨の大きさなど・・・
このような事によって楽器の形が変わってきます。
例えばしんしんさんのご質問のように、本当に歌い方の真似をするだけなのであれば、特にリスクはありません。
しかし歌い方の真似だけでなく、発声まで真似してしまったとしたら、そこには確実にリスクを伴います。
それは自分という最高の楽器を持っていながら、別の楽器の音に無理やり似せるという事になるので、その分不必要な所に不必要な負荷がかかるという事です。
ではその負荷がかかるという場所とは、人間の体のどこに当たるか?
それは喉(声帯)です。
なので歌マネ(ものまね)というのは、単に「上達しない」というだけでなく、発声を崩したり、声帯を壊す危険性があるという事を覚えておいて下さい。
「声帯を壊したらどうなるか?」というご説明はこちら
2.あなたの好きな歌手の喚声点と、あなたの喚声点の位置が違うかもしれないから
これも「あなたの好きな歌手の体と、あなたの体は違うから」というテーマに属する話になりますが、人にはそれぞれ喚声点というものが存在し、その位置は人それぞれ異なります。
ではそもそも喚声点とは何か?
声楽やオペラの世界では主に「チェンジ」と呼ばれます。
ポップスを学ばれてる方々にとっては「チェンジ」というと「地声と裏声の変わり目」を想像する方が多いと思いますが、それとこれとは違います。
それは低音域と中音域の変わり目、そして中音域と高音域の変わり目の事を言います。
細かく言うと喚声点というのはもっとたくさん存在しますが、基本的に覚えておかなければいけないのは、この2つの変わり目です。
例えば私は声楽の世界では「バリトン」という声域で普段歌の仕事をしてますが、私の中音域の喚声点はシ♭の音、そして高音域の喚声点はミ♭の音にあります。
私は普通の人に比べて少しこの喚声点の音は低い所に位置しますが、それは人によって異なります。
もちろんバス歌手の人達は私より低く、テノール歌手の人達は私より高い所にこの喚声点が存在します。
女性なら低い声域から「アルト」「メゾ・ソプラノ」「ソプラノ」と、声種によって喚声点が違ければ、同じ声種の中でも微妙に喚声点の位置が異なる事もあります。
なので、例えばあなたの好きな歌手がテノールだとして、あなたがバリトンだとすると、その好きな歌手の真似をして歌っていたら、当然声帯に大きな負担がかかってしまう事になります。
またその状態では上手く歌えない事はもちろん、歌の上達も絶対にあり得ません。
もちろんこれは「喚声点の位置が、あなたの好きな歌手と違ってたら」の話です。
その好きな歌手と自分の「声の高さ」「声の太さ」「声質」が似ていたら、喚声点の位置が同じという事もあり得ます。
そこはしっかり好きな歌手の声と、自分の声を聴き比べる必要があるでしょう。
といってもそもそも自分の喚声点の位置が分からないようでは駄目なので、まずは人の声よりも先に、自分の声の勉強をしましょう。
喚声点に関する動画はこちら
3.歌が上手くなる為には、歌が上手い人の表面的な部分では無く、体の使い方や筋肉の動かし方など、生理的な部分を真似しないと上手くならないから
そもそも歌い方を真似するだけで上手くなるのであれば、世の中の歌が好きな人達はみんな歌が上手くなるでしょう。
そうなれば、私のようなボイストレーナーは必要ないし、誰も歌の上達において苦労する事はありません。
しかし、それでは上手くなれないからみんな悩む訳ですよね。
真似事に関しては、この記事をご覧のあなたも散々してきたと思います。
ではどうしたら歌は上手くなるか?
それは表面的な真似ではなく、体の使い方や、筋肉の動かし方を真似する事が大切です。
なので、また「そもそも論」になってしまいますが(笑)、あなたがまず人の歌を聴いて、
- その人が本当に技術的に歌が上手い人なのか?
- または下手なのか?
という事を見抜けなければいけません。
もしも発声が悪い人の事を「発声が良い」と勘違いしてしまったら、そもそも絶対だめですよね。
なので歌が上手くなる為には、技術と同時に耳も鍛えなければいけないという事です。
耳を鍛え、発声が良い人達の歌をたくさん聴き、
- その人のどこが上手いのか?
- どうしたらそのような声を出せるようになるのか?
- 舌根の位置はどこに定めているのか?
- 声帯の周りの筋肉をどのように使っているのか?
- お腹や背中はどのように使っているのか?
など、このような事を分析し、このような事を真似する事が大切です。
もしもその好きな人の歌い方に憧れ、どうしてもその好きな人の歌い方で上手く歌えるようになりたいのであれば、まずはこのような生理的な部分を完全に真似できるようになって、歌い方を真似すれば良いでしょう。
しかし先程も申し上げたとおり、万が一その人の発声が技術的に全然正しいものでなかったとしたら、ただ変な癖が付いて終わるだけなので気を付けましょう。
まとめ
歌が上手くなりたいのであれば、歌い方を真似するのではなく、上手い人の体の使い方や、筋肉の動かし方を真似する事が大切
繰り返しになりますが、初心者が好きな人の真似をしながら歌うというのは、逆に変な癖がついてしまったり、声帯を壊す危険性が伴います。
生理的な部分を真似するのであれば良いのですが、それも初心者にとっては非常に難しいことなので、なるべくなら正しい発声をまず学び、そこからその応用で好きな歌手の真似をするようにしましょう。
正しい発声に関する具体的な説明はこちら
モノマネ発声に関連する記事です。
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LEE
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