一問一答!
中野・シャーペッグ・ミュージック・カンパニーのボイストレーナーLEE(@BRAD_LEE19)です。
今回も読者様のご質問にズバズバ答えていきます!
今回のご質問はこれ!
名前: 龍
性別: 男性
相談・質問のタイトル: 支えの感覚
相談・質問の内容: 今、支えの練習をしているのですが息をどれくらい入れて、どのような力を入れて支えるのかが分かりません。LEEさんのイメージでも良いので、感覚的なことを教えていただけると嬉しいです。また、背中とお腹どっちに意識を集中した方がいいですか?
龍さん、ご質問ありがとうございます!
支えは最も大切な基礎でありながら、最も難しい技術でもあります。
なので独学で訓練をされる事は決しておすすめ出来ませんが、知識だけでも蓄えて頂きたいので、今回はご質問を頂いた通り、支えの感覚と、また具体的な支えの理論を交えてお話させて頂きます。
そもそも支えはなぜ必要なの?
まずはここからお話させて頂きます。
声を体で支えなければいけない理由
- 低音域から高音域まで喉が締まらないようにする為。
- 喉声では無い、高い響きを得る為。
- 母音の響きを綺麗に繋ぐ為。
- 喉の消耗を最低限に防ぐ為。
- 息を無駄に消耗させない為。
これをご覧頂ければ分かるように、支えとは発声の根本的な技術になります。
では1番から一つずつ見ていきましょう。
1.低音域から高音域まで喉が締まらないようにする為
正しい発声を行う上で大切なのは、低音域から高音域まで喉を開けて発声を行う事です。
喉を開けて発声をする為には、喉頭を下げ、軟口蓋を上げて発声を行わなければいけないのですが、実際はこれを高音域まで維持する事が非常に難しく、支えの技術が必要不可欠になります。
喉頭を下げる為の技術的な説明はこちら
軟口蓋を上げる為の技術的な説明はこちら
喉を開ける感覚についてはYouTubeチャンネルでもお話してます。
是非ご覧下さい。
なぜ支えないと高音域で喉が締まってきてしまうの?
そもそも高音域で喉頭が上がり、喉が締まってきてしまうというのは人間の生理現象です。
人間は歌う為に体が作られている訳ではありません。
息をする為、物を食べる為、会話をする為に体が作られています。
なので高音域で喉頭を下げて歌うというのは、そもそも人間の体の動きに反してるという事です。
2.喉声では無い、高い響きを得る為
喉は締まるといわゆる「喉声」と呼ばれる声になります。
喉声に関する具体的な説明はこちら
しかし喉が開けば、高い響きを得られる訳ではありません。
高い響きを得るというのは、喉がまず開くようになってから目指さなければいけない次のステップです。
高い響きの声を目指す為には、喉から発せられる感覚では無く、額から発せられる感覚が必要になるのですが、その時に必要になる技術が支えになります。
額から声を発する為の技術的な説明はこちら
声の響きに関する動画はこちら
3.母音の響きを綺麗に繋ぐ為
これは主にクラシックで使われる技術になりますが、クラシックの技術には「レガート」というものがあります。
【レガートとは?】
イタリア語で「滑らかに」という意味。
声楽だけでなく、ピアノ、弦楽器、管楽器など、クラッシック全般で使われる音楽用語です。
レガートに関する具体的な説明はこちら
レガートは「滑らかに」という意味ですが、滑らかに歌う為には、母音の響きを綺麗に繋ぐ事が大切です。
しかしこれも言うのは簡単ですが、実際は非常に難しい技術です。
支えずにただ母音を繋ぐだけでは、体の抜けたような声になり、レガートとは呼べない息(フレーズ)の短い歌になってしまいます。
体をフルに使い、息(フレーズ)の長い歌を歌う為には、お腹と背中で我慢をする感覚で声を支えなければいけません。
4.喉の消耗を最低限に防ぐ為
言うまでも無い話ですが「どうしたら歌い手として、健康な喉で一生歌い続けられるか?」というのは、歌を歌っていく上で最も大切なテーマの一つです。
このような事を常に頭の片隅に置き発声を磨いていかなければ、歌い手として一生ステージで歌い続ける事は出来ません。
ではどうしたら歌い手として一生ステージで歌い続けていけるか?
それは支えという基礎を覚えて、喉に頼らない、体を使った発声を覚えなければいけないという事です。
5.息を無駄に消耗させない為
先程レガートの内容でもお話しましたが、支えの技術が無いと歌ってる途中、息はどんどん無駄に消耗してしまいます。
支えの技術とは、お腹や背中で息の流れを我慢をする技術でもあります。
しかし息が無駄に消耗していってしまうというのは、それを我慢する力と技術が無いという事になります。
なので息(フレーズ)を長く保つ為には、やはり支えの技術が必要になるという事です。
息を長く保つための具体的な説明はこちら
支えのご質問について
ここまで長くなりましたが、ご質問者様のご質問にお答えさせて頂きます。
一つ目のご質問
今、支えの練習をしているのですが息をどれくらい入れて、どのような力を入れて支えるのかが分かりません。LEEさんのイメージでも良いので、感覚的なことを教えていただけると嬉しいです。
イメージと感覚についてのご質問ですね。
技術的な説明については過去にもたくさん記事を書いているので、ぜひ下記のリンクから過去のブログをご覧ください。
支えに関する技術的な説明はこちら
まず「息をどのくらい入れれば良いか?」というご質問ですが、息は目一杯深く入れます。
支えを作る為の息は、肋骨の下を基点に、浮き輪を付けているような感覚で、背中まで目一杯入れて下さい。
また息は丹田まで深く感じ、感覚としてはお尻や太ももまで膨らむイメージで吸えるように訓練しましょう。
【丹田(たんでん)とは?】
へその下の所で、下腹の内部にあり、気力が集まる所とも言われています。
始めのうちはここまで感じる事は出来ませんが、訓練して息が深く入るようになると、ここまでの感覚が生まれるようになります。
なので日々訓練を続ける事が大切です。
「どのような力を入れて支えるのかがわからない」というご質問ですが、支えとは体の内側から外側に力が加わります。
その力は音域によって異なり、低音域は弱く、高音域は強く力が加わります。
なぜ音域によって支えの力は異なるの?
それは額から声を外に発する為です。
先ほど「なぜ支えなければいけないのか?」という根本的なお話しをしましたが、額から声を発する為に支える訳です。
逆を言うと、額から声が発せられれば支えなくても良いという事です。
しかし高音域では特に支えなければ、響きは低くなり、確実に喉声になります。
なので低音域と高音域の支えの強さは、必然的に異なるという事です。
二つ目のご質問
背中とお腹どっちに意識を集中した方がいいですか?
この答えは背中です。
何故なら、背中が使えるようになればお腹も必然的に使えるようになりますが、お腹を使えるようになっても背中は使えるようにならないからです。
正しい発声を行う上で、背中は非常に大切です。
これも技術的な説明は過去に詳しく書いているので、過去の記事をご覧ください。
背中の重要性と技術の説明に関する具体的な説明はこちら
一つ背中を使う為の感覚的なお話をするのであれば、息を吸ったときに背中を開け、更に歌っている時はそれを開け続ける意識が大切です。
背中を開ける感覚というのも、理論的には、肋骨の下を基点に息を目一杯吸い、背中に入った息を維持し続けるという事です。
それをなぜ「背中が開く」という表現をするかと言うと、背中に目一杯息を入れたときに、背中が開いてる感覚があるからです。
ちなみにこれは私だけの感覚ではなく、発声の事を正しく理解している声楽家は皆、こういう表現を使います。
声楽家の人達にとっては、あるあるな感覚です。
もちろん、これらの事は頭で理解した所で簡単に出来るようになる事ではありません。
正しい訓練を積め重ねる事で得られるようになる感覚です。
誰もが始めは素人であり、始めから出来る人はいません。
コツコツ訓練を積み重ね、技術を習得できるように努めましょう。
まとめ
支えの感覚を掴むためには、正しく呼吸を取り、背中を意識して訓練を重ねる事が大切。
支えて声を出すときは、「支えの上に声(息)を乗せる」という感覚も覚えておきましょう。
LEE
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